西埠頭/鵺
幕は降ろされた。
劇団錬肉工房公演 西埠頭/鵺
錬肉工房の公演を見るようになって、もう何年になるか、と考えた。東京転勤の後、2002年からであるから、15年になるのか。
劇団の舞台監督をつとめる鈴木俊司君に誘われて、である。
鈴木俊司君と私は、高校1年生で同じクラスになって以来の友人。高校を卒業した後、私は京都の大学へ進み、彼は東京の大学ばかり受験していて、その中から日本大学を選んで進んだ。大学生になってからも、夏休み冬休みに大阪の実家にたびたび帰省したときに、会うことが続いていた。
彼は大学卒業後、大手教育関係出版社に就職した。そののちも、出張などで帰ってきたときは、以前同様に顔を合わせることをしていた。もちろんそのころからは、お互いが好きなお酒を飲みながら。
私は大阪勤務のあと、名古屋に転勤。さらにその後、東京に転勤した。東京に転勤してからは、大体3-4か月に一度くらいの間隔で酒を酌み交わした。そのうちに家族含めて食事をするようにもなった。
5年前、私の妻が病床にあった時も、病院に見舞いに訪ねてきてくれた。
彼が肺がんの切除を行ったのは4年ほど前。以後の経過にさほど問題はなかったと思っていた。
最近はバイキングの活動の探求に興味を持って、北欧方面に足を延ばしていた。昨秋、ノルウェイから帰国した後、いつものように旅行の話で盃を傾けようと決めていた。しかし、直前になって、少し調子が悪いので日延べをしたいと連絡を受けた。
その後は、治療の影響で、味覚障害と食欲不振を訴えていた。各種の治療を試みたが、最近になり声の出しにくい状態になっていた。彼との連絡はこれまでも電子メールでとっていた。電話で話すことはまずなかった。最近までメール交換を行っていた。
さて今回の錬肉工房公演 西埠頭/鵺 の数日間の公演のうち、私は公演最終日に劇場にいったのだが、最終日前日に家族とともに彼が観劇に訪れたと後から聞いた。
その10日後。
自宅から救急車で緊急入院とのことで、翌日病院に向かった。そのときはすでに沈静の上、酸素マスク。本人とは会話ができなので、ご家族身内の方とお話をして夕刻に病室を辞した。酸素量の高レベルであるのが気がかりであった。
翌朝、昨夜永眠との報を受けた。63歳10か月の生涯。
今回の公演が舞台監督としての最後の作品になった。
幕は降ろされた。
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作 ベルナール=マリ・コルテス/世阿弥
構成・演出 岡本 章
訳 佐伯隆幸
出演
上杉満代、笛田宇一郎、横田桂子、岡本 章、川根隆伸、牧三千子、村本浩子、吉村ちひろ
現代演劇の先端と能が鋭く切り結ぶ問題作!
ニューヨークの辺境に流れついた、内戦で敗退した南米移民の一族。西欧=資本主義の枠から排除され、追いやられた人々の姿を描く、アクチュアルなコルテスの問題作「西埠頭」。 そして、頼政の鵺退治の顛末を題材に、敗者の内奥の孤独、虚無、暗闇を鋭く見定めた、世阿弥の夢幻能の傑作「鵺」。 岡本章のラディカルな構成・演出により、その両者のテキストが並置され、さらには、第一線で活躍する表現者の参加を得、時代、言語、文化を超えた累々たる非業の死者たちの姿、声が鮮烈に浮かび上る。「現代能楽集」シリーズ、衝撃の第14作!
舞台美術 島 次郎、沼田かおり
照明 山口 暁
音楽 曽我 傑
衣装 中村裕身子
舞台監督 鈴木俊司
舞台監督助手 国井 聡
宣伝美術 宗利淳一
写真 宮内 勝
VTR撮影 たきしまひろよし
照明操作 あかり組
大道具 C-COM
助成 芸術文化振興基金
制作 錬肉工房
制作協力 トップステア株式会社
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